障害年金と生活保護の関係
1 収入認定と生活保護費の返還義務
生活保護法第61条には、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」と記載されています。
生活保護を受給している方が障害年金を受給することになった場合には、収入の変動があったことになりますので、まずは、障害年金を受給するようになったことについて保護の実施機関又は福祉事務所長に届け出しなければなりません。
そして、生活保護法第63条では、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」とされています。
したがって、生活保護を受給していている、もしくは過去に受給していた方に対して、障害年金が過去にさかのぼって支給された場合には、その障害年金に相当する金額の範囲内で、受け取った生活保護費を返還しなければならないことになります。
また、生活保護を受給している方が将来に向かって障害年金を受給できるようになった場合、障害年金の分、生活保護費が減額されます。
2 生活保護を受けている方が障害年金を申請するメリット
このように聞くと、生活保護を受給している方が障害年金を申請する意味がないように思えるかもしれません。
ただし、障害年金を受給できるようになった場合には、生活保護法に基づく生活保護の支給額の増加が期待できます。
生活保護法8条1項では、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」と記載されており、2項では「前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」と記載されています。
そして、障害年金の対象となるような障害があるということは、この2項における「要保護性」について考慮されるべき事情であるといえます。
そのため、この厚生労働大臣の定める基準により、障害年金を受給できるようになった場合には、地域によって金額は差があるものの、おおむね2万円前後の金額が生活保護費に加算される運用となっています。
このように、生活保護を受給されている場合でも、障害年金を受給することで経済的にメリットを受けることが期待できます。
3 すでに障害者加算がされている場合の注意点
なお、障害年金の認定を受けた場合に限らず、精神障害者保健福祉手帳の2級または1級の認定を受けている場合にも、先述した生活保護費の加算が認められます。
この場合で、例えば精神障害者保健福祉手帳の方で2級を取得していたところ、その後に障害年金の認定を受けたけれども3級であったというような場合には、障害の状態が軽くなったと判断されてしまい、生活保護費の障害者加算の金額がなくなってしまいます。
お役立ち情報
(目次)
- 障害年金を受給するためのポイント
- 障害年金で必要な書類
- 障害年金の決定から支給まで
- 不支給通知が届いた場合
- 障害年金の事後重症請求
- 障害年金における社会的治癒とは
- 障害年金の配偶者加算
- 国民年金で障害年金2級が認定された場合の金額
- 障害年金の金額
- 働きながら障害年金を受給できる場合
- 障害年金と生活保護の関係
- 障害年金の受給要件
- 障害年金の時効
- 障害年金の種類
- 障害年金がもらえない理由
- 障害年金における障害認定日とは
- 障害年金受給中に新たな障害が発生した場合の対応方法
- 障害年金を受給することによるデメリット
- うつ病と障害年金3級
- 知的障害の場合の障害年金における初診日
- てんかんで障害年金が受け取れる場合
- 精神疾患について障害年金が認められる基準
- 高次脳機能障害で障害年金が受け取れる場合
- 聴力の障害で障害年金が受け取れる場合
- 気管支喘息で障害年金が受け取れる場合
- 心臓にペースメーカーを入れている場合の障害年金
- 義足で障害年金は受給できるのか
- メニエール病で障害年金を請求する場合のポイント
- 精神疾患の障害年金の更新時の注意点
- 額改定請求について
- 有期認定と永久認定について
- 障害年金と障害者手帳の違い
- 特別障害者手当
- 障害者手帳について
- 障害年金の更新
- 障害者年金
- 社会保険労務士とは
- 障害年金についてどこに相談すればよいか
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