障害年金と生活保護の関係

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 大澤耕平

最終更新日:2025年02月04日

1 収入認定と生活保護費の返還義務

 生活保護法第61条には、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」と記載されています。

 生活保護を受給している方が障害年金を受給することになった場合には、収入の変動があったことになりますので、まずは、障害年金を受給するようになったことについて保護の実施機関又は福祉事務所長に届け出しなければなりません。

 そして、生活保護法第63条では、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」とされています。

 したがって、生活保護を受給していている、もしくは過去に受給していた方に対して、障害年金が過去にさかのぼって支給された場合には、その障害年金に相当する金額の範囲内で、受け取った生活保護費を返還しなければならないことになります。

 また、生活保護を受給している方が将来に向かって障害年金を受給できるようになった場合、障害年金の分、生活保護費が減額されます。

2 生活保護を受けている方が障害年金を申請するメリット

 このように聞くと、生活保護を受給している方が障害年金を申請する意味がないように思えるかもしれません。

 ただし、障害年金を受給できるようになった場合には、生活保護法に基づく生活保護の支給額の増加が期待できます。

 生活保護法8条1項では、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする」と記載されており、2項では「前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」と記載されています。

 そして、障害年金の対象となるような障害があるということは、この2項における「要保護性」について考慮されるべき事情であるといえます。

 そのため、この厚生労働大臣の定める基準により、障害年金を受給できるようになった場合には、地域によって金額は差があるものの、おおむね2万円前後の金額が生活保護費に加算される運用となっています。

 このように、生活保護を受給されている場合でも、障害年金を受給することで経済的にメリットを受けることが期待できます。

3 すでに障害者加算がされている場合の注意点

 なお、障害年金の認定を受けた場合に限らず、精神障害者保健福祉手帳の2級または1級の認定を受けている場合にも、先述した生活保護費の加算が認められます。

 この場合で、例えば精神障害者保健福祉手帳の方で2級を取得していたところ、その後に障害年金の認定を受けたけれども3級であったというような場合には、障害の状態が軽くなったと判断されてしまい、生活保護費の障害者加算の金額がなくなってしまいます。

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